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普通2種免許受験資格確認等請求事件

平成28年6月14日判決言渡
平成27年(行ウ)第680号 普通2種免許受験資格確認等請求事件
口頭弁論終結日 平成28年4月14日

主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 被告は,原告に対し,原告が平成13年5月まで第1種運転免許(普通自動車免許)を受けていたことを証明する内容の運転免許経歴証明書を交付せよ。
2 被告は,原告に対し,110万円を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告が,運転免許経歴証明書の交付等を目的とする被告(以下「センター」ともいう。)に対し,原告が平成13年5月まで第1種運転免許(普通自動車免許)を受けていたことを証明する内容の運転免許経歴証明書を交付することを求めたところ(以下,上記の運転免許を「普通第1種免許」といい,上記の運転免許経歴証明書を「本件証明書」という。),これを違法に拒否されたとして,被告に対し,公法上の当事者訴訟として,本件証明書を交付することを求めるとともに,不法行為に基づき,損害賠償を求める事案である。
1 関係法令等の定め
関係法令等の定めは,別紙「関係法令等の定め」に記載のとおりである(なお,同別紙中で定義した略称は,以下の本文においても同様に用いるものとする。)。
2 前提事実(当事者間に争いがない。)
(1) 当事者
ア 原告
2
原告は,昭和25年▲月▲▲日生まれの男性であり,平成25年7月3日に原動機付自転車免許を,平成27年2月27日に普通第1種免許を,それぞれ受けた。
イ 被告
被告は,自動車の運転及び交通の安全に関する研修の実施,運転免許を受けた者の自動車の運転に関する経歴等に係る資料の提供並びに交通事故等に関する調査研究を行うことにより,道路の交通に起因する障害の防止及び運転免許を受けた者等の利便の増進に資することを目的として設立された法人である。
(2) 本件証明書の交付の申請等
原告は,平成27年5月,被告に対し,当時受けていた普通第1種免許の免許証番号(原告が本件証明書の交付を求める失効免許の免許証番号とは異なるもの)を記載して,失効免許(更新されなかった免許証に係る運転免許)及び取消免許(取消しを受けた運転免許)の運転免許経歴証明書の交付を申請したところ,被告は,同月12日,原告に対し,原告について失効免許及び取消免許の記録が存しない旨連絡した。なお,被告は,原告に対し,普通第1種免許及び原動機付自転車免許を現に受けている旨の運転免許経歴証明書を交付した。
3 争点
(1) 被告が原告に対し本件証明書を交付する義務の有無
(2) 被告が本件証明書を交付しなかったことによる不法行為の成否
4 争点に対する当事者の主張
(1) 争点(1)(被告が原告に対し本件証明書を交付する義務の有無)について
(原告の主張)
原告は,昭和51年頃,普通第1種免許を受け,その後,平成13年に逮捕されるまで,自動車を運転していた。原告は,その後7年半の間,懲役刑
3に服し上記免許の更新を受けることができず,同免許は失効し又は取り消されたが,原告は,同免許を受けていたから,被告は,原告に対し,本件証明書を交付すべきである。
(被告の主張)
原告が交付を求める本件証明書は,失効免許又は取消免許に関する運転免許経歴証明書であるところ,被告が運転免許経歴証明書を発行すべきものは,免許証番号の明らかな運転免許のうち,失効免許に関するものは,失効後3年(交通違反歴のあるものについては6年)未満のもの(ただし,昭和52年12月31日以前に試験の一部免除により取得した現有免許の免許証番号と同一の免許証番号に係るものを除く。),取消免許に関するものは,昭和47年1月1日以降に取り消されたものに限られる。しかるに,原告が交付を求める平成13年5月に受けていた運転免許に係る運転免許経歴証明書は,上記要件を充足しない。したがって,被告は,原告に対し,本件証明書を交付する義務を負わない。
(2) 争点(2)(被告が本件証明書を交付しなかったことによる不法行為の成否)について
(原告の主張)
上記(1)(原告の主張)のとおり,原告は平成13年まで普通第1種免許を受けていたため,被告は,原告に対し本件証明書を交付すべきところ,これを怠った。原告は,被告が本件証明書を交付しないことにより,普通自動車第2種免許を取得することができず,就職活動に際し就職を断られるなど損害を受け,また,精神的苦痛を受けた。原告が被った就職活動費に係る損害額は70万円であり,精神的苦痛を慰謝するに足りる金員は40万円が相当である。
(被告の主張)
上記(1)(被告の主張)のとおり,被告は,原告に対し,本件証明書を交付
4する義務を負わず,本件証明書を交付しなかったことによる損害を賠償する義務を負わない。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(被告が原告に対し本件証明書を交付する義務の有無)について(1) 被告は,自動車の運転及び交通の安全に関する研修の実施,運転免許を受けた者の自動車の運転に関する経歴等に係る資料の提供並びに交通事故等に関する調査研究を行うことにより,道路の交通に起因する障害の防止及び運転免許を受けた者等の利便の増進に資することを目的として設立された法人であり(法1条,3条),その業務として,運転免許を受けた者の自動車の運転に関する経歴に係る内閣府令で定める事項を記載した書面を当該運転免許を受けた者の求めに応じて交付することが定められている(法29条1項4号)。そして,本件施行規則において,上記運転免許を受けた者の自動車の運転に関する経歴に係る事項として,運転免許に係る経歴についての証明に関する事項が規定されている(本件施行規則9条)。また,被告は,業務の開始前に,業務方法書を作成しなければならないとされ(法30条1項),業務方法書に記載すべき事項は,内閣府令で定めるものとされているところ(同条2項),本件施行規則において,運転免許経歴証明書の交付に関する事項を業務方法書に記載すべきものとされている(本件施行規則13条4号)。そして,本件業務方法書において,被告は,上記運転免許を受けた者の自動車の運転に関する経歴に係る事項を記載した書面を,当該運転免許を受けた者の求めに応じて交付するものとされる上(本件業務方法書8条),業務の運営に必要な事項について細則を定めるものとされるところ(本件業務方法書16条),これらの定め等を受けて本件実施規程が置かれ(本件実施規程1条),運転免許経歴証明書については,現有免許,免許証番号の明らかな失効免許(交通違反歴のあるものについては失効後6年以内に,交通違反歴のないものについては失効後3年以内に申請があったものに限る。ただし,昭和52年12月31日以前に試験の一部免除により取得した現有免許の免許証番号と同一の免許証番号に係るものを除く。)及び取消免許(取消しを受けた免許のうち,昭和47年1月1日以降に取消しを受けたもの)について交付すべきものとされている(本件実施規程9条(2))。
(2) このように,被告の業務内容は,法によりその基本的な事項が定められた上,順次,本件施行規則,本件業務方法書,本件実施規程等にその詳細を定めることが委ねられ,これら本件施行規則等により被告の業務内容の詳細が定められるものとされている。そして,上記のとおり,これらの規定により,被告が交付すべきものとされる運転免許経歴証明書の対象となる運転免許は,免許証番号の明らかな運転免許のうち,失効免許については,失効後3年(交通違反歴のあるものについては6年)未満のもの(昭和52年12月31日以前に試験の一部免除により取得した現有免許の免許証番号と同一の免許証番号に係るものを除く。),取消免許については,昭和47年1月1日以降に取り消されたもののみと定められている。法は,被告が行う運転免許経歴証明書の交付業務につき,合理的な範囲の運転免許に係るものに限定することを禁ずるものとまでは解されず,被告は,上記(1)のように定められた運転免許経歴証明書の対象となる運転免許の範囲につき法が被告の業務として定めた趣旨に反するなどの特段の事情のない限り,上記の範囲外の運転免許につき,当該運転免許を受けた者に対し,運転免許経歴証明書を交付すべき義務を負うものではないと解するのが相当であるところ,本件において,上記の特段の事情はうかがわれない。
(3) 原告は,被告に対し,平成13年5月まで受けていたという失効免許な
いし取消免許の運転免許経歴証明書の交付を求めているところ,上記(1)に判示したとおり,被告が交付すべきものとされる運転免許経歴証明書は,免許証番号の明らかな運転免許のうち,失効免許については,失効後3年(交
6通違反歴のあるものについては6年)未満のもの(昭和52年12月31日以前に試験の一部免除により取得した現有免許の免許証番号と同一の免許証番号に係るものを除く。),取消免許については,昭和47年1月1日以降に取り消されたものに限られる。しかるに,原告が平成13年5月まで受けていたという普通第1種免許は,免許証番号が明らかでないほか,原告は,同免許について更新を受けていないことを自認していることから,同免許は,原告の主張によっても遅くとも平成18年には失効したものと認められるところ,原告が被告に対し本件証明書の交付を求めたのは,平成27年であるから,同年時点において,被告が交通違反歴のある運転免許に係る運転免許経歴証明書を交付すべきものとされる失効後の期間である6年を経過していることは明らかである。また,仮に,原告が平成13年5月まで受けていたという普通第1種免許が取り消されていたとしても,免許証番号が明らかでないほか,原告が同免許を受けた後,それが取り消されたと認めるべき証拠はない。そうすると,被告は,原告に対し,原告が平成13年当時に受けていたという普通第1種免許の運転免許経歴証明書を交付すべき義務を負うものとはいえない。したがって,原告の主張は理由がない。
2 争点(2)(被告が本件証明書を交付しなかったことによる不法行為の成否)について
上記1に判示したとおり,被告は原告に対し本件証明書を交付する義務を負わないから,被告は,本件証明書を交付しなかったことによる損害賠償義務を負うものとは解されない。したがって,原告の主張は理由がない。
第4 結語
よって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
7
東京地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官 林 俊 之
裁判官 梶 浦 義 嗣
裁判官 高 橋 心 平
8
(別紙)
関 係 法 令 等 の 定 め
第1 自動車安全運転センター法(以下「法」という。)
1 1条(目的)
自動車安全運転センターは,自動車の運転に関する研修及び運転免許を受けていない者に対する交通の安全に関する研修の実施,運転免許を受けた者の自動車の運転に関する経歴に係る資料及び交通事故に関する資料の提供並びに交通事故等に関する調査研究を行うことにより,道路の交通に起因する障害の防止及び運転免許を受けた者等の利便の増進に資することを目的とする。
2 3条(法人格)
自動車安全運転センター(以下「センター」という。)は,法人とする。
3 29条(業務)1項
センターは,第1条の目的を達成するため,次の業務を行う。
(1) 1項1ないし3号 〔略〕
(2) 1項4号
運転免許を受けた者の自動車の運転に関する経歴に係る内閣府令で定める事項を記載した書面を,当該運転免許を受けた者の求めに応じて交付すること。
(3) 1項5ないし9号 〔略〕
4 30条(業務方法書)
(1) 1項
センターは,業務の開始前に,業務方法書を作成し,国家公安委員会の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも,同様とする。
(2) 2項
前項の業務方法書に記載すべき事項は,内閣府令で定める。第2 自動車安全運転センター法施行規則(以下「本件施行規則」という。)
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1 9条(経歴証明業務)
法第29条第1項第4号の内閣府令で定める事項は,無事故・無違反の証明に関する事項,運転記録(〔括弧内略〕)の証明に関する事項,累積点数等(〔括弧内略〕)の証明に関する事項又は運転免許に係る経歴の証明に関する事項と
し,これらの事項を記載する同号の書面の様式は,〔中略〕のとおりとする。
2 13条(業務方法書の記載事項)
(1) 1ないし3号 〔略〕
(2) 4号
法第29条第1項第4号に規定する書面の交付に関する事項
(3) 5ないし8号 〔略〕
第3 自動車安全運転センター業務方法書(昭和50年11月1日認可。以下「本件業務方法書」という。)
1 1条(目的)
この業務方法書は,自動車安全運転センター法(〔括弧内略〕)第30条第1項の規定に基づき,自動車安全運転センター(以下「センター」という。)の業務の方法について基本的事項を定め,もつて,業務の適正,かつ,円滑な運営を図ることを目的とする。
2 8条(経歴証明業務)
センターは,運転免許を受けた者の自動車の運転に関する経歴に係る法施行規則第9条で定める事項を記載した書面を,当該運転免許を受けた者の求めに応じて交付するものとする。
3 16条(細目の制定)
センターは,この業務方法書に定めるもののほか,業務の運営に関し必要な事項について細則を定めるものとする。第4 自動車安全運転センター通知業務及び経歴証明業務実施規程(昭和51年4月16日センター規程第9号。以下「本件実施規程」という。)
10
1 1条(目的)
この規程は,自動車安全運転センター業務方法書(以下「業務方法書」という。)第10条及び第16条の規定に基づき,業務方法書〔中略〕第8条に規定する経歴証明業務の実施に関し必要な事項を定め,もつて,当該業務の適正,かつ,円滑な実施を図ることを目的とする。
2 9条(証明事項)
証明書の証明事項は,次のとおりとする。
(1) (1) 〔略〕
(2) (2)
運転免許経歴証明書については,現有免許又は免許証番号の明らかな失効免許(更新されなかった免許証に係る免許をいい,交通違反歴のあるものについては失効後6年以内に,交通違反歴のないものについては失効後3年以内に申請があつたものに限る。ただし,昭和52年12月31日以前に試験の一部免除により取得した現有免許の免許証番号と同一の免許証番号に係るものを除く。〔中略〕)若しくは取消し免許(取消しを受けた免許をいい,昭和47年1月1日以降取消しを受けたものに限る。〔中略〕)について免許の種類,免許証様式による免許年月日,免許証の有効期限又は免許の取消し年月日・欠格期間及び免許の条件とする。
以 上



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